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9. 業務範囲が不明確でトラブルになった事例

Last-modified: 2012-09-24 (月) 16:35:35 (2434d)
Top / 9. 業務範囲が不明確でトラブルになった事例

C.業務範囲 G.第三者が権利を有するソフトウェア トラブル原因分類 FrontPage


 

事例概要

  • 原告:ユーザ
  • 被告:システム開発会社(ベンダ)
  • 請求内容
    1400万円の損害賠償請求
  • 経緯
    問題となったのは会計処理システムで、システムはメインパッケージと、ユーザ向けにカスタマイズされたサブシステムに分かれていた。メインパッケージは、被告ベンダとは別のZ社が使用許諾権を有し、サブシステムは被告ベンダが有していた。ユーザは、Z社と被告ベンダとそれぞれ使用許諾契約を結んだ。Z社がメインパッケージの2000年問題対応の無償バージョンアップを行ったため、バージョンアップに伴うサブシステムの補修が必要となった。被告ベンダは補修対応費用として1400万円の見積もりを提出したが、ユーザが支払いをしないと主張したため、見積もりを撤回し補修に応じなかった。ユーザが被告ベンダに補修作業費用相当額として1400万円を請求した。

争点

サブシステムを受託したベンダは、メインパッケージのバージョンアップに対応するための補修の義務を負うか。

  • ユーザの主張
    ユーザと被告ベンダ間の使用許諾契約は、全体として統合された会計処理システムを構築する義務を負っており、メインパッケージのバージョンアップにあわせてサブシステムを補修する義務を負っている。さらに、保守契約が成立しており、被告ベンダは補修する義務を負っていた。
  • ベンダの主張
    使用許諾契約の内容として、被告ベンダはサブシステムについての開発義務しか負わない。ユーザと被告ベンダ間に保守契約はなく、ユーザとZ社間に保守契約があったに過ぎない。

判決

請求棄却。ユーザはメインパッケージについてZ社と別途契約を締結していることなどから、被告ベンダは会計処理システム全体について責任を負うということはないと判示し、変更後のメインパッケージにサブシステムを適用させる義務はないとした。また、保守契約については、ユーザと被告ベンダ間にはその存在が認められなかった。

反省点

  • 契約の際には業務範囲を明確にしておくべきである
    開発契約の際に、被告ベンダの業務範囲(パッケージ側のバージョンアップ作業に対応するサブシステム側の補修作業を行う責任(=システム全体についての責任)を負うか)や費用負担(補修作業を行う場合の費用(有償/無償)の扱い)などを明確にしておくべきであった。
  • ベンダが複数の場合、どのベンダが保守するか明確にすべきである
    ユーザは被告ベンダと保守業務契約を締結し、業務範囲を明確にしておくべきであった。

モデル契約書活用のポイント

  • パッケージソフトウェアのバージョンアップがされた際に、カスタマイズを担当したベンダがどのような責任を負うか、明確にするために、モデル契約書<追補版>が活用できる。 すなわち、カスタマイズの開発の契約をする場合、カスタマイズ担当のベンダのなすべき作業は、サブシステムの構築であり、パッケージについての瑕疵は自らの責任ではないことを明確化することができ(Eソフトウェア設計・制作業務契約5条、F構築・設定業務契約5条では、パッケージ固有の瑕疵については、責任を負わない旨規定し、カスタマイズ担当ベンダがシステム全体について責任を負うわけではないことを明確化している。)、これにより責任範囲を明確化すれば紛争は回避できたと考えられる。
  • また、モデル契約書を用いて保守業務契約を締結していれば、保守業務の明確化(J保守業務契約2条1項では、明記したもの以外については、保守する必要がないことが明示されており、また、適応保守については保守業務から除く旨が明示されている。)されていることから、これにより責任範囲を明確化すれば紛争は回避できたと考えられる。