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8. 工数増加分の費用負担が問題となった事例

Last-modified: 2012-09-24 (月) 16:42:12 (2464d)
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事例概要

原告:システム開発会社(下請業者) 被告:システム開発会社(元請業者)

  • 請求内容
    委託代金等請求 (訴額 1億3876万5000円)

経緯

下請業者は元請業者から、システム開発委託の打診を受けた。元請業者の説明によれば、本件システムの規模は約3万5000プログラムステップ、工数は35~40人月程度との見込みであったため、下請業者はこれを元に見積りを作成した。ところが、実際に開発が始まると、当初予定の工数ではとても足りず、結果的には大幅な赤字となった。そこで、下請業者は元請業者に対し、当初予定を超える工数分の委託代金支払を請求。

争点

本件契約の委託代金は、当初見込みの規模・工数を前提として締結されたものであり、増加工数分は本件契約の範囲外といえるか。

  • 下請業者の主張
    本件契約の見積りは、元請業者が説明した当初見込み規模・工数を前提として算出したので、委託代金もその規模・工数が前提である。予定を上回る工数分は、契約範囲外であり、元請業者が費用負担すべき。 元請業者の主張
    本件契約で元請業者が下請業者に委託したのは、システム完成までの開発業務であり、委託代金は、その業務全体の対価である。当初見積りより費用が増加した場合、そのリスクは下請業者が引き受けるべきである。

判決

下請業者の請求棄却。下請業者はシステム開発業者としての専門的知識・能力を有し、契約締結前に本件システムにつき元請業者から十分説明を受けていたのだから、本件システム完成までの委託代金を正しく見積もれたはず。また、契約書にはシステムの見込み規模・工数などの記載はない。そのため、本件契約の委託代金は、当初見込みの規模・工数を前提としたものではなく、システム開発業務全体の対価である。

反省点

委託代金を算定するにつき前提条件があるのなら、契約書に明記しておくべきである

  • 本件では、当初見込みの規模・工数について、見積書には記載があったものの、契約書には記載されなかった。下請業者が、業務範囲の前提条件とする規模・工数を契約書に明記するか、または見込み規模・工数が記載された見積書を契約書に添付するなどしていれば、下請業者に何ら落ち度がないのに当初見込みを超える工数が必要となってしまった場合に、増加工数分は契約の範囲外として扱われる可能性がある。

不確定要素があるならば、契約に変更管理手続きを規定しておくべきである

  • 上記のように、前提条件を契約書に明記しておくことは一つの方法だが、実際に増加工数・費用が発生した際には、元請業者と下請業者のいずれがそれを負担すべきか、やはり争われることになり、根本的なトラブル予防とはならない。契約締結当時にシステム規模・仕様等の変更・修正が予想される場合には、契約対象とする業務範囲を詳細に定めた上で、仕様等が変動する場合の変更管理手続を規定しておくべきである。

モデル契約書活用のポイント

モデル契約書では、一旦確定した仕様書等が変更となる場合や、未確定事項がある場合の取扱いとして、変更管理手続の導入を推奨している(モデル契約書<第一版>第34条~第37条)。モデル契約書に定める変更管理手続とは、合意事項を事後的に変更する必要がある場合に、変更の理由、変更のために要する費用、変更作業のスケジュール、変更が個別契約の条件(作業期間、納期、委託料等)に与える影響等について、両当事者が協議を行い、双方の承認を得てはじめて変更が確定するというものである。両当事者の承認が得られない場合には、作業中断や契約解除をなしうることが規定されている。
 モデル契約書を利用し、このような変更管理手続規定を契約に入れた上で、業務範囲を詳細に定めておけば、予想外にシステムの規模が拡大したような場合や、仕様書等に変更が生じた場合に、両当事者が費用負担やスケジュールの見直し等についての協議を行う機会が得られる。そして、協議が整わない間、受託者側(ベンダ側)で一旦作業を中断できる。
なお、変更管理手続規定は、決して受託者側(ベンダ側)にのみメリットがあるものではない。変更管理手続を定めることで、両当事者は、契約締結段階において、業務範囲の詳細な確認や未確定事項の抽出を行うことになるが、それにより、委託者側(ユーザ側)は契約後の業務範囲を巡るトラブルを予防できる。また、受注者側(ベンダ側)は余分なリスク対応費用を計上せずに、業務範囲に見合った適正な見積りを出すことができるため、委託者側(ユーザ側)はより安価な発注が可能となろう。