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6. 契約形態が請負か準委任かで、問題となった事例

Last-modified: 2012-09-24 (月) 16:28:22 (2550d)
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B.作業に不適合な契約形態 トラブル原因分類 FrontPage


 

(参考:東京地方裁判所 平成3年2月22日判決(昭和62年(ワ)第473号、昭和62年(ワ)第4869号))

事例概要

  • 原告:ソフトウェア開発会社(受託者)
  • 被告:ソフトウェア開発会社(委託者)
  • 請求内容
    本訴請求: ソフトウェア代金請求(訴額 698万円)
    反訴請求: 前払金返還請求(訴額 425万円)
  • 経緯
    受託者は委託者から、ある大規模な通信システムの一部に使うプログラムの開発を委託され、契約を結んだ。ところが、開発は大幅に遅れ、結局は開発不能が確定した。そのため、委託者は受託者の債務不履行を理由に本件契約を解除し、開発費を支払わなかった。そこで、受託者は訴訟を提起し、本件プログラム開発委託契約は準委任契約であると主張して、作業を行った分の報酬を請求した。

争点

本件契約の類型は、請負か、準委任か。

  • 受託者の主張
    本件契約は準委任契約であるから、受託者はプログラムを完成させる義務を負っておらず、プログラムが未完成であっても、作業した分についての報酬を得る権利がある。
  • 委託者の主張
    本件契約は請負契約であるから、受託者にはプログラムを完成させる義務があった。プログラムを完成させていない受託者には、報酬を求める権利はない。

判決

  • 受託者の請求棄却、委託者の請求認容(前払金425万円全額の返還)。
    ①受託者作成の開発工程表には、受託者がプログラムを完成させることを前提に、完成までのスケジュールが記載されていること、②プログラムの規模・内容も受託者が完成可能なものであること、などから本件契約は請負契約であると認定された。

反省点

  • 業務委託する場合は、請負か、準委任か、契約書で明確に定めておくべきである
    本件では、プログラム開発「委託」契約が結ばれたが、この「委託」は、民法上の用語ではない。そのため、「委託」を民法上のどの契約類型にあてはめるかによって、契約から生じる当事者の権利・義務が異なってくることがある。
    民法は、依頼者から独立した立場で、他人のために役務を行う契約類型として、「請負」と「委任」(「準委任」を含む。)を規定するが、請負と委任の主な相違点は、a) 仕事の完成義務の有無、及びb) 瑕疵担保責任の有無である。すなわち、請負であれば、仕事を請け負った者(請負人)は、基本的には、仕事を最後まで完成させなければ報酬を請求することはできず、また、成果物の瑕疵(欠陥)につき修補や損害賠償をする義務を負うが、委任における受任者はこのような義務を負わない。もっとも、委任における受任者は、善管注意義務(その職業・地位に応じて通常期待される程度の注意を払って事務を処理する義務)を負っており、専門家として期待されるだけの行為をしなければ、損害賠償責任を問われることもある。
    そのため、一口に開発委託契約といっても、その実質が請負と委任のどちらにあたるかによって、受託者の義務が異なる場合がある。本件では、契約類型をめぐるトラブルを避けるためにも、契約書において、当該契約がいずれの契約類型であるかを明示しておくべきであった。
    ただし、いくら契約で明記したとしても、実質が伴っていなければ、明記したとおりの契約類型とは認められないことがある。例えば、契約書に「請負契約」と明記しても、実質がどうみても委任であるならば、裁判所はその契約を請負とは認めない可能性が高い。
  • 契約時に未確定の仕様があれば、未確定事項として書面に明記して管理すべきである
    本件で受託者は、委託者から受託者に対する仕様書の提出が遅れたり、仕様に関する指示がたびたび変わったりしたことで、プログラム開発が不能になったと主張した。
    しかし、未確定の事項があるならば、未決事項として書面に明記しておき、確定後には、変更管理手続に則って、両当事者でその確定に伴う影響を検討し、契約条件を修正しておくべきであった。

モデル契約書活用のポイント~

  • モデル契約書では、要件定義、外部設計、ソフトウェア開発、ソフトウェア運用準備・移行の業務ごとに契約類型を明記することを推奨している(モデル契約書<第一版>第4条)。 一般的に、プログラム開発委託は請負契約とすることが多いので、本件でも、委託者は請負であることを当然の前提として契約したのかもしれないが、モデル契約書の考え方に従い契約類型を契約書にはっきり明記し、両当事者間で合意しておくことで、本件のような紛争を防ぐことが期待できる。