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5. 契約成立以前に作業を開始したためトラブルになった事例

Last-modified: 2012-09-24 (月) 16:25:37 (2550d)
Top / 5. 契約成立以前に作業を開始したためトラブルになった事例

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事例概要

  • 原告:システム開発会社(ベンダ)
  • 被告:ユーザ
  • 請求内容
    25億円の損害賠償請求
  • 経緯
    ユーザは、自社商品についての販売代理店を通さない直販型販売システムの開発をベンダに依頼した。稼働予定時までの期間が短かったため、「要件定義・設計サービス」の正式契約書を締結する以前から要件定義作業等を開始していたところ、予想以上に要件が膨らみ、作業遅延が生じた。ところが、このように要件定義や設計作業が終了しない中で、当初予定していた内容での「要件定義・設計サービス」の正式契約書が締結され、これに基づく支払いが行われた。
    その後、「構築サービス」の正式契約書を締結することなく開発計画が進行する中で、要件定義と費用に関する交渉が行われていったが、システム構築の全面的な見直し等が発生し、費用も当初予定額を大幅に上回る見積もりとなったために、ユーザがプロジェクト中止を決断することとなり、ベンダが、それまでに費やしたシステム構築費用を求めて提訴した。 

争点

ベンダが、正式契約書を締結していない「構築サービス」の内容を実施したことについて、ユーザに支払い義務があるか。

  • ベンダの主張
    「要件定義・設計サービス契約」に引き続き交わす予定だった「構築サービス契約」の内容を含むシステム構築を実施していることから、その費用について支払って欲しい。
  • ユーザの主張
    締結したのは、「要件定義・設計サービス契約」だけであり、「構築サービス契約」については契約を締結していない。

反省点

  • 開発作業に着手する前に契約書を締結すべきである
    ベンダとユーザは、要件定義作業や構築作業等の具体的開発作業に着手する以前に、正式契約書を締結し、納期、作業に要する費用、ユーザ・ベンダそれぞれの責任など取引に関する重要な事項を明確にしておくべきであった。
  • 契約内容について変更が生じた場合、契約書により変更内容を定めるべきである
    要件が膨らみ当初納期、費用では実現できないことが判明した場合、適宜協議を行うと共に、都度契約内容の見直しを行うべきであった。

モデル契約書の活用ポイント

  • 作業に着手する以前に、モデル契約書<追補版>における「A要件定義支援及びパッケージソフトウェア候補選定支援業務契約(カスタマイズモデル)」、「Bパッケージソフトウェア選定支援及び要件定義支援業務委託契約(カスタマイズモデル)」、「D外部設計支援業務契約」、「Eソフトウェア設計・制作業務契約」、「F構築・設定業務契約」を活用し、各フェーズにおける費用や、ユーザ及びベンダそれぞれの責任を明確にすることができる。
  • すなわち、フェーズごとに契約書を締結することなく、一連の作業を進行させた場合、当該費用負担の根拠や、当該作業における責任の所在が不明確となるが、モデル契約書を締結することでこれらを明確にすることができ、紛争が回避できたと考えられる。 モデル契約書<追補版>第2条においては、重要事項説明書に定められた契約内容の確定及び変更のいずれにおいてもユーザ及びベンダの記名押印による書面の合意を必要とし、これ以外の方法による変更合意を認めないこととしている。したがって、モデル契約書<追補版>を用いて、納期、工数、費用等に変更が生じた場合には、適宜重要事項説明書の内容を修正することで、実態に則した契約内容を実現することができ、紛争解決に資することとなる。
  • なお、契約書において変更事項を取り決める前提として、ベンダは、工数、費用等が増えるリスクが顕在化した場合には、タイムリーに当該情報をユーザとシェアするとともに、必要な協議を行うことが肝要である。