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22. 著作権の帰属と、仕様変更による追加費用負担が争われた事例

Last-modified: 2012-09-24 (月) 16:40:54 (2464d)
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F.知的財産権 H.変更管理 トラブル原因分類 FrontPage


 

事例概要

原告:システム開発会社(元請業者) 被告:システム開発会社(下請業者)

請求内容

本訴請求
著作権侵害差止等請求(訴額 7496万5000円) 反訴請求
開発委託費等請求(訴額 6087万4250円)

経緯

元請業者は下請業者に対し、ソフト開発を委託。下請業者がソフトを開発し、元請業者に納品したが、元請業者による仕様変更で追加作業が発生したことにより、委託報酬の額を巡り対立関係となった。下請業者は、報酬未払いを理由に、ソフトを単独で複製・販売し、SOFTICにソフトの単独著作権を登録。そこで、元請業者はソフトの著作権が共有であることを主張し、複製・販売等の差止め、著作権登録抹消、損害賠償を求めた。これに対し、下請業者は、仕様変更分を含む報酬支払いを求めた。

争点

①本件ソフトの著作権は共有か。②仕様変更で追加報酬が発生するか。

  • 元請業者の主張
    元請業者は、基本設計段階から下請業者と共同で設計に携わったのだから、ソフトは共同著作物となり、著作権は共有となる。基本設計を詳細化する行為は、仕様変更にあたらず、追加報酬は発生しない。
  • 下請業者の主張
    下請業者はすべての開発工程を実質的に行い、プログラミングを単独で行ったので、著作権は下請業者だけに帰属する。元請業者の仕様変更要求に応じて行った作業は、当初契約の範囲外なので、追加報酬が発生する。

判決

元請業者の本訴請求のうち、複製・販売等の差止め、SOFTICへの著作権登録の抹消を認容、損害賠償は一部認容(ライセンス料1057万5000円、弁護士費用105万円の支払い)。
下請業者の反訴請求(報酬請求)は一部認容(報酬額1853万3750円の支払い)。

反省点

  • 著作権の帰属については、契約書に明記しておくべきである
    本件ではソフトの著作権の帰属について争われたが、判決では、内部設計及びプログラミングは下請業者が単独で行っており、元請業者は要件定義及び外部設計段階で開発委託者としての要望を述べたにすぎないので、本件ソフトの著作権は、原則的には下請業者だけに帰属するとした(もっとも、元請業者・下請業者間で著作権を共有とする事後的な書面での合意があったとの事実が認定されたため、結果的には著作権は共有とされた)。
    プログラムの著作権は、上記判決のとおり、プログラムを作成した者に原則的に帰属する。しかし、委託者が単なる発注者としての行動を超えて、プログラム制作を共同で行うなど、プログラム作成に創作的な関与を行った場合、著作権が委託者・受託者の共有になる余地もある。紛争を防止するため、作業着手前に契約書に著作権の帰属を明記すべきであった。
  • 変更管理手続を規定しておくべきである
    本件のもう一つの争点は、仕様変更により追加報酬が発生するかどうかであったが、判決は、元請業者からの仕様変更の申出は、当初の契約の業務範囲を超える新たな請負契約の申込みと解され、下請業者がそれに応じた業務を完了すれば、新たな請負契約が成立したとして報酬請求権が発生するとした。もっとも、ソフト開発の性質上、当事者間の打ち合わせの中で仕様の詳細にある程度修正が加えられるのが通常であるから、仕様の詳細に関する変更では、追加報酬は発生しないとも述べた。その上で、本件ソフト開発における変更要求の一部は、基本機能設計書で確定した項目に変更を加えるものであり、仕様変更にあたるため、追加報酬が発生すると判断した。
    本件では、契約書に変更管理手続を規定しておくことで、仕様変更が発生した際の費用負担、リスケジュール等について両当事者が協議する機会を持つことができたと思われる。

モデル契約書活用のポイント~

モデル契約<第一版>第45条では、著作権の帰属を契約に明記することを推奨している。また、同第2条では、基本契約及び個別契約で取り決めたことが、当該取引に関する合意事項のすべてである、と規定しているため、契約書の外、例えば口頭などで合意がなされても、契約には影響しない仕組みとなっている。そのため、モデル契約書を使えば、仕様変更等を行う場合、両当事者の書面での合意による変更契約や変更管理手続を行うこととなり、口頭での曖昧な約束などから生じるトラブルを防止しうる。