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21. 著作権の帰属が問題となった事例

Last-modified: 2012-09-24 (月) 16:40:28 (2464d)
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F.知的財産権 トラブル原因分類 FrontPage


 

事例概要

  • 原告:ソフト開発会社(受託者)
  • 被告:ソフト開発会社(委託者)
  • 請求内容
    著作権侵害差止等請求
  • 経緯
    委託者はA社に対して珠算ソフトの開発を委託したが、A社はそれを受託者に再委託した。受託者は本件ソフトの開発を行い、A経由で委託者に納品した。委託者は本件ソフトの販売を開始したが、委託者からA社に委託料が支払われていないことから、受託者は本件ソフトの著作権を主張し、委託者に対して複製、頒布等の差止請求を行った。

争点

本件ソフトの著作権は誰に帰属するか。

  • 受託者の主張
    本件ソフトは、受託者がA社を介して委託者から再委託を受け、具体的な企画からプログラム作成までを行ったのであるから、著作権は受託者にある。
  • 委託者の主張
    本件ソフトの基本的発想は、すべて委託者の提案によるものであるから、著作権は委託者にある。

判決

受託者の請求認容。
受託者が、本件ソフトの企画設計及び制作を行ったのであって、委託者は本件ソフトを発注したにすぎないから、本件ソフトの著作権は受託者に帰属する。
また、委託者とA社との契約には、「本件システム中の成果物の所有権は、委託者よりA社へ委託料が完済された時に、A社から委託者へ移転する。ただし、成果物の中の、同種の成果物に共通に利用されるノウハウ、ルーチン、モジュール等に関する権利は、A社に留保される」との条項があるが、委託者が委託料を完済していない以上、権利は委託者に移転していない。  

反省点

  • 著作権の帰属を契約に明記しておくべきである
    本件契約では、工業所有権を受ける権利及び所有権に関する権利帰属規定はあったが、著作権の帰属については、汎用的なノウハウ、モジュール、ルーチン等に関する権利を留保するとの規定を除き、それ以外の部分について規定がなかった。加えて、これらの規定も委託者とA社間の契約にとどまり、A社と受託者との間には明文による合意がなかった。紛争を避けるためには、著作権の権利帰属についての明確な規定を設けておくべきだった。
  • 著作権を委託者に移転するつもりがあったとしても、所有権とは別に移転時期を明記しておくべきである
    本件の委託契約には、委託料が完済されるまで、成果物の所有権はA 社が留保する、との契約条項があったことから、判決では、委託料が完済されていない以上、著作権も含め、権利は委託者に移転していないとの判断がなされた。 しかし、本来、所有権は形のある物(有体物)を対象とする権利であり、形のないものを対象とする著作権とは別個の権利であるから、契約に所有権を留保するという規定があっても、そこから当然に著作権まで留保されることにはならない。A 社ないし受託者において、仮に汎用的な利用が可能なプログラムの著作権を除き委託料完済時点で委託者に著作権を譲渡する意思であったとしても、所有権とは別個に、著作権についての委託料完済までの権利留保の規定も明記しておくべきだった。

モデル契約書活用のポイント

  • プログラムの著作権は、原則的には、プログラムを作成した者(ベンダ)に帰属する。しかし、成果物にはユーザのノウハウ等の情報が含まれており、それら情報がベンダを通じて競合他社に流出するのを避ける必要があること、開発費用をユーザが負担していることなどから、ユーザが著作権譲渡を望むことがある。 他方、ベンダには、成果物の横展開やパッケージ化のため、成果物の著作権を保持しておきたいニーズがある。ユーザが懸念する情報流出は、別途定める秘密保持条項で対応しうるし、ユーザが支払う開発費用には著作権譲渡の対価まで含まれない場合もあるだろう。
  • モデル契約書<第一版>第45 条では、こういったユーザとベンダのニーズを調整するため、著作権の帰属について、A案:ベンダがすべての著作権を保持する、B案:汎用利用が可能なプログラム等の著作権はベンダが保持し、それ以外をユーザに譲渡する、C案:汎用的な利用が可能なプログラム等の著作権はベンダが保持し、それ以外をベンダ・ユーザの共有とする、 以上3つの条文案を用意している。ただし、どの条文でも、ユーザがソフトを自己利用するのに必要な範囲で複製、翻案ができるとの規定がセットになっており、また本件のように一般に販売する目的で開発を委託するソフトウェア(モデル契約書では「特定ソフトウェア」)についても、ソフトウェアを購入するエンドユーザのための利用許諾の規定が設けられているため、ユーザに不都合は生じないであろう。
  • なお、モデル契約書<追補版>では、ソフトの著作権をベンダに帰属させ、プログラムの再利用を促進することで、リーズナブルな価格でパッケージが提供され、社会への幅広い普及につながるとの考えから、新規作成されたソフトウェアの権利は原則としてベンダに帰属するものとしている。