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20. プロジェクト体制が不十分だった事例

Last-modified: 2012-09-24 (月) 16:39:42 (2550d)
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E.役割分担・プロジェクト推進体制 K.自治体関連 トラブル原因分類 FrontPage


 

事例概要

  • 原告:システム開発会社(受託者)
  • 被告:サービス会社(委託者。自治体からシステムを受注し、ベンダに委託)
  • 請求 開発費用支払請求(1851万円)

経緯

本件の自治体(ユーザ)では、水道料金収納システムを地元のITベンダに全面的に任せていた。同システムのリニューアルにあたって、同自治体が主導権を握って進めて、費用も低減することとした。まず、同自治体の関連団体であるサービス会社(委託者)に発注し、委託者が受託者に開発を委託することになった。ところが、委託者には、IT技術の専門家も水道課の業務に詳しい者もいなかった上、受託者は他県の企業で同自治体関係の開発は初めてであったため、仕様策定が難航した。自治体は、水道課担当職員を会議に出席させるなどしたが、意思疎通が十分にできなかった。結局、開発されたシステムには不具合が多く、納期を6カ月延期しても完成に至らなかった。

争点

システム開発が頓挫したのはどちらの責任か。

  • 受託者の主張
    委託者はシステム開発に必要な仕様を明確にしなかったし、窓口端末の閲覧、借用もできなかった。情報提供も不十分だった。
  • 委託者の主張
    開発期限を6カ月延長したのに、システムが完成しなかった。

判決

係争中

反省点

要件定義においてベンダが十分に支援すべきである
本件では、ソフトウェア開発の発注者であるサービス会社には、水道料金に関する知識も、IT技術に関する知識もなかった上、開発システムのユーザである自治体も、システム構築に不慣れであった。このような状況においては、ベンダによる手厚い支援が必要となるが、本件では、そこまでの支援は行われていなかった。結果として、業務範囲の策定も十分なものとならなかった。

プロジェクト推進体制を充実すべきである
本件では、オープンソースの地理情報システム用ソフトウェアをベースに、水道料金収受システムを開発する計画であった。そのため、ユーザは、当該ソフトウェアの利用に通じている業者という条件から、ベンダを選んだ。しかし、選定されたベンダは、他県のベンダであり、この自治体のシステムは初めてであった。ユーザとしては、十分な情報を提供するために、優秀な人材を配置し、万全の体制を整える必要があったが、実際の体制は不十分なものだった。 そもそも、ユーザが長年にわたって用いていた水道料金収受の従来システムについては、仕様書等は存在せず、ユーザの担当者は利用方法のみを知っているにすぎなかったようである。このような情報不足がある上に自治体自体がシステム開発に不慣れであれば、プロジェクト全体を統括するコンサルタントを導入する方法もあり得たが、そのような施策はとっていない。

モデル契約書活用のポイント

モデル契約書<第一版>の第8条では、ユーザ・ベンダ双方の協働と役割分担について定めている。特に、ユーザとベンダの共同作業であるとの基本認識を確認したうえで、それぞれの役割分担を文書化することが重要である(63頁)。
システム開発に不慣れなユーザを想定した、モデル契約書<追補版>においても、要件定義支援における重要事項説明書に、企画、業務要件定義などの作業について、ユーザとベンダの役割分担を明確に記載すべきことが具体的に規定されている。本件のように、ユーザや発注者がシステム開発に不慣れであることが契約前に明らかになっているケースでは、自治体、サービス会社及びベンダのそれぞれの役割分担、とりわけ、サービス会社の依頼に基づいて自治体が行うべき作業の内容(水道事業の内容や、従来システムの問題点の洗い出しなど)を、あらかじめ示しておくことが重要である。
また、重要事項説明書の連絡協議会の実施要項に基づき、本件の特殊な契約形態に対応できるように、参加者、実施頻度、参加者に期待される能力などを明確にして、自治体側が適切な人員を選択できるようにすることも重要である。