トップ   編集 凍結解除 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS

19. 役割分担が不明確だった事例

Last-modified: 2012-09-24 (月) 16:39:25 (2550d)
Top / 19. 役割分担が不明確だった事例

E.役割分担・プロジェクト推進体制 トラブル原因分類 FrontPage


 

事例概要

  • 原告:放送会社(ユーザ)
  • 被告:システム開発会社(ベンダ)
  • 本訴請求
    損害賠償請求(19億3500万円)
  • 反訴請求
    開発費用請求(5億円余り)

経緯

ユーザはまず、コンサルテーション会社に依頼して要件定義と「基本設計」を行った。ここで、ベンダがシステム開発を受託した。その後、ユーザとベンダは「開発要素設計書」(一般でいう基本設計書に相当)の作成作業に取り組んだ。その際、上記「基本設計」の内容を参照しながら、ベンダが開発すべき項目を決めていった。しかし、開発要素設計書においては、すべての要件を決めることができなかった。これが原因で、システム開発が大幅に遅延したため、ユーザが契約を解除した。

争点

システム開発が大幅に遅延したのはどちらの責任か。

  • ユーザの主張
    ベンダは未決案件が多いというが、大規模システムなのだから、ある程度の未決案件があるのは当然であり、それを詰めていくのはベンダの責任である。
  • ベンダの主張
    未決案件が数十件もあったのが遅延の原因である。ベンダは、契約に関係する成果物は納めており、債務不履行はない。

訴訟の結果

調停中

反省点

不明確な用語を避けるべきである
本件では、「開発要素設計書」の作成が行われているが、「開発要素設計書」という名称からは、その位置づけが明らかではない。開発要素設計という名称からは、かなり詳細なコンポーネントの設計という印象を与えやすいので、例えば要件定義レベルであれば、その旨を表示するべきである。用語については「共通フレーム2007」を参照して、明確な定義のあるものを用いるべきであった。

完成基準及び当事者双方の義務を明らかにしておくべきである
本件では、「開発要素設計書」作成の完成基準や、ユーザとベンダの間の役割分担が明確になっていなかったため、大量の未決案件項目が残り、システム開発の実行を大きく遅延させたものと思われる。作業に入る前に、「開発要素設計書」の完成基準や、ユーザとベンダとの役割分担について、合意しておく必要があった。また、先行契約の成果物の問題点に対処するための条項を明確にしておくことも必要であった。

モデル契約書活用のポイント

モデル契約書<第一版>及び<追補版>では、多段階契約を基本としている。これは、各作業段階における業務内容や完成基準を明確にし、各当事者の義務を示すものである。 本件の「開発要素設計書」作成支援業務は、要件定義レベルの業務を含んでいるようである。これは、モデル契約書<第一版>での「要件定義」や、モデル契約書<追補版>でいう「B パッケージソフトウェア選定支援及び要件定義支援契約」に該当する。例えばモデル契約書<追補版>の重要事項説明書9頁のように、要件定義に関わる各作業項目について、双方の作業実施担当を記述するものとなっているので、これらを活用して、ユーザとベンダとの間の役割分担や、作業内容を明確にすべきである。 また、業務終了の確認内容(例えば<追補版>重要事項説明書8頁)についても、事前に当事者双方が確認しておくことにより、作業の完了についての共通認識を高めることができる。
なお、先行契約の成果物(要件定義書等)の不備については、モデル契約書<第一版>114頁に記載がある。第19条として、要件定義の不備により後工程の仕事の内容に生じた瑕疵については、原則として後工程のベンダが責任を負わないことが示されている。また、オプションとして、後工程のベンダによる要件定義書の精査、変更の協議についての条項も示されているので、これらを参考にして契約書に必要な条項を盛り込むべきである。