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18. 役割分担が不明確だった事例

Last-modified: 2012-09-24 (月) 16:39:13 (2464d)
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E.役割分担・プロジェクト推進体制 トラブル原因分類 FrontPage


 

事例概要

  • 原告:システム開発会社(ベンダ)
  • 被告:住宅管理会社(ユーザ)
  • 本訴請求
    システム構築費用支払請求(約1億5000万円)
  • 反訴請求
    支払済み構築費用返還請求(約3億円)
  • 経緯
    ベンダは、ユーザの住宅管理システムの構築を受注した。システムの構築がかなり遅れたものの、納入が完了した。しかし、既存システムからの移行に向けたデータの整備の責任分担について意見が折り合わず、結局、ユーザが、ベンダの債務不履行を理由に契約を解除した。

争点

データの整備ができなかったのはユーザ、ベンダどちらの責任か。

  • ベンダの主張
    そもそもの問題は、ユーザ社内での用語の統一である。 データの整備はユーザの責任であり、それができない以上、システムは期待通りには動かない。
  • ユーザの主張
    データの整備の問題は、ベンダから突然言われたもの。 データの整備の範囲や方法を特定するのはベンダの責任であり、それを怠ったためデータ整備作業にとりかかれなかった。

訴訟結果

双方とも請求を放棄し、ゼロ和解で決着した。



反省点

  • 当初からデータ移行の検討を進めておくべきである
    システム開発において、データ移行は問題が生じやすい業務でありながら、重視されないことが多い。ベンダとしては、データ移行において生じること、作業しなければならないことをユーザに提示しつつ、作業内容等を固めていく必要がある。データ移行については、要件定義段階から、移行要件として検討していくべきであり、用語の統一等もその時点で検討すべきものであるが、本件では、その検討が不十分だったものと思われる。
  • データ移行に関する役割分担を明確にすべきである
    本件では、データ移行について、ユーザ、ベンダそれぞれが、どこまでの作業を担当するかが不明確であり、データ整備の時期も決まっていなかった。例えば、ユーザ社内での用語の統一などは、時間的余裕をもってユーザが着手するべきであった。本件では、システムの構築自体が遅れていたこともあって、早期にデータ移行の準備に取り掛かっていれば、十分に遂行可能であったと思われる。

モデル契約書活用のポイント

  • モデル契約書<第一版>第4条(個別契約)1項5号では、第8条(協働と役割分担)に定める作業責任分担の詳細を個別契約に定めることを予定しており、役割分担に関する個別契約のサンプル(119頁)では、非機能要件の一つとして移行要件が挙げられているほか、システム設計(外部設計)の段階で、移行設計(移行方式、データ、時期)の作業を分担する主体を決定するものとなっている。これらのサンプルを参照し、早期に個別契約で定めることが、データ移行のトラブル回避につながる。
  • また、モデル契約書<追補版>では「G データ移行支援契約」が該当する(26頁以下)。重要事項説明書の告知事項には、データ移行についてはユーザとベンダの協働が必須であり、ユーザによる作業が必要なこと、ユーザとベンダの作業の分担、内容、期間、費用について十分な精査が必要なことが記載されている(26頁「告知事項1」)。さらに、移行データの範囲、移行のための抽出作業、移行のための変換作業については、対象や作業及びユーザとベンダの役割分担を明記することとされている(27ないし28頁)。 ベンダとしては、これら告知事項を明確に示してユーザの理解を得るとともに、データ範囲、抽出作業の分担などについて、ユーザとベンダの間で合意を形成することが重要である。