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16. 役割分担・プロジェクト推進体制に問題があった事例

Last-modified: 2012-09-24 (月) 16:38:43 (2550d)
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E.役割分担・プロジェクト推進体制 トラブル原因分類 FrontPage


 

事例概要

  • 原告:大手旅行代理店(ユーザ)
  • 被告:システム開発業者会社(ベンダ)
  • 請求内容 (本訴)既払代金返還請求及びハード・ソフトに係る調達費用などの損害賠償請求(約11億6000万円) (反訴)作業委託料金の未収分などを請求(約7億6000万円)
  • 経緯
    ユーザは、基幹業務で使用する宿泊予約等を行うHR(Hotel Reservation)システムの再構築を検討し、他社と比較の上で当該ベンダへ発注した。基本合意書及び基本契約、要件定義・基本設計・詳細設計に係る個別契約を締結。しかし、スケジュールが大幅に遅延したため、プロジェクト推進体制などを見直し、ベンダも人員体制等を改めたものの、これに掛かる費用が当初の見積額を大きく超え、稼働時期も1年以上の延伸を申し出たため、ユーザは作業中止を求め、後に契約を解除した。その後、プロジェクト失敗の責任や開発費用の支払いを巡って交渉を続けたが折り合いがつかず、訴訟に至った。

争点

要件定義・基本設計等の完成が遅延した原因がどちらにあったか。

  • ユーザの主張
    基本合意書で、開発費用の総額を約していた。開発範囲が増加していないにもかかわらず、大幅な費用の増加、稼働日の延伸は納得し難い。 ベンダがユーザの業務やHRシステムを理解するのに時間が掛かったこと、また、ベンダが進捗の遅れを取り戻すべく体制を代えたために新たな担当者へ説明を行う手間が増えたため、開発作業が遅延した。
  • ベンダの主張
    基本合意書は、金額,スケジュールの変更が前提のもので、個別契約が優先する。ユーザ側における業務要件やHRシステムを伝える担当者の不足及び担当者のスキルにも問題があったことによる要件提示の遅延に加え、度重なる要件変更、開発範囲の増加が作業遅延の主な原因である。 和解内容 3年余りの裁判を経て、ベンダ・ユーザともに請求を放棄し、裁判費用も各自の負担とする裁判上の和解が成立した。

反省点

  • 要件定義・基本設計段階において双方が課された役割を十分に果たせていなかった
    本件紛争の原因は、要件定義・基本設計段階におけるベンダ・ユーザの共同作業が不十分であった点にあると考えられる。ユーザ側は、ユーザの業務やHRシステム等を説明するプロジェクト要員の不足や、プロジェクトマネジャーによる監視に問題があった。他方で、ベンダ側も、開発作業の進捗状況について見通しが甘く、プロジェクト推進体制を急遽変更し、そのことが更なる作業遅延を招くなど対応に問題があった。本件個別契約は請負契約として締結されていたが、要件定義はあくまでユーザの業務であるから、ユーザはベンダに要件を詳細に提示する必要があるが、同時にベンダも専門家として十分な支援体制のもとで支援業務を行うべきであった。

モデル契約書活用のポイント

  • 本件では、要件定義作業に入る段階までに、モデル契約書<第一版>を使い、要件定義段階でのユーザ・ベンダの各々の役割について明確に決定すべきであった。具体的には、モデル契約書<第一版>システム基本契約書を締結することで同契約「第2章本件業務の推進体制」(第8条~第13条)の規定に基づき役割分担やプロジェクト推進体制を確認するとともに責任の所在を明確化し、同第15条に基づき要件定義に係る個別契約を締結して具体的な共同作業または分担作業を定め、さらに連絡協議会(第12条)を適宜開催し進捗状況を両者が常に共有することで、開発作業の遅延の原因を早期に発見し、修正することは可能であったと思われる。