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15. プロジェクトマネージメント義務違反、協力義務違反があった事例

Last-modified: 2012-09-24 (月) 16:38:20 (2464d)
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E.役割分担・プロジェクト推進体制 トラブル原因分類 FrontPage


 

事例概要

  • 原告:ユーザ(国民健康保険組合)
  • 被告:ベンダ(システム開発会社)
  • 請求内容 既払い委託料返還請求(2億5200万円)
  • 経緯
    ユーザとベンダは、電算システムの開発委託契約を締結したが、同システムは納入期限までに完成せず、ユーザはベンダに対し、債務不履行解除をし、支払済の委託料の返還を求めた。

争点

ベンダの債務の内容はどのようなものであったか、ベンダは債務を履行したといえるか。 ユーザは、ベンダによる開発に協力すべき契約上の義務を負うか。負うとすれば、ユーザは協力したといえるか。システムの開発作業が遅れ完成に至らなかった原因は何か。

  • ユーザの主張
    ベンダはプロジェクトマネージメント義務を負っている。ユーザが、協力義務を負うのは例外的な場合のみである。完成が遅れたのは、ベンダの知識・技術不足、プロジェクトマネージメント能力不足が原因である。
  • ベンダの主張
    オーダーメイドのシステム開発には、ユーザの主体的関与が不可欠であり、また契約書にも協力義務が定められている。ユーザの協力義務違反が遅延の原因である。

判決

ベンダは、契約書・提案書で提示した開発手順・手法で開発を進め、進捗状況を管理し、開発を阻害する要因を発見し、(適時・適切に)対処すべき義務を負い、さらに、ユーザによって作業を阻害される行為がないよう働きかける義務を負う(プロジェクトマネージメント義務)。具体的には、ユーザが機能の追加等の要求をした場合、当該要求が委託料や納入期限等に影響を及ぼすものであった場合にユーザに対し適時その旨説明して、要求の撤回や追加の委託料の負担等を求めるなどの義務である。他方で、オーダーメイドのシステム開発はベンダのみでは完成できず、ユーザは、開発過程において、どのような機能を要望するのかを明確に伝え、ベンダとともに検討し、画面や帳票を決定し、成果物の検収をするなどの協力義務がある。具体的には、ベンダから求められた際に、ユーザが適時適切な意思決定をしてない点が協力義務違反であるとされた。ベンダのプロジェクトマネージメント義務違反、ユーザの協力義務違反があり、完成しなかったことについてはどちらかの責任とはいえず、債務不履行は認められない。債務不履行解除は認められなかったが、民法641条によるユーザからの解除(請負契約の仕事が完成するまでは、ベンダの損害を賠償してユーザがいつでも契約を解除できる旨の規定)が認められ、ベンダの過失を差し引き1億1340万円につき認容された。

反省点

  • ベンダはプロジェクトマネージメント義務を認識すべきである ベンダは、開発を成功させるために、問題点を発見し、ユーザに対して問題点について協力を求める義務があることに留意すべきである。
  • ユーザは協力義務を認識すべきである ユーザは、ベンダから協力を求められた場合、適時に適切な意思決定をしなければ、協力義務違反に問われることとなる。

モデル契約書活用のポイント

  • 本件では、工程単位で納期を決めておきながら、委託料は一括して定めており、基本設計が未確定のまま、次の工程を進めている。そこでユーザが機能について追加の要望したことにより混乱をきたした事例であると評価できる。工程別に委託料を定める多段階契約を締結しておけば、問題が生じることを防止できた可能性が高い。
  • 未確定事項の確定に関する取り決めがなされていれば、基本設計に不完全な点があって、懸案事項を検討しながら開発をすすめるにあたっても、モデル契約書<第一版>の想定するプロジェクトマネージメントが機能した可能性があった。