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14. ユーザがシステム開発に協力せず、トラブルになった事例

Last-modified: 2012-09-24 (月) 16:38:04 (2485d)
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E.役割分担・プロジェクト推進体制 トラブル原因分類 FrontPage


 

事例概要

  • 原告:システム開発会社(ベンダ)
  • 被告:図書教材の販売事業者(ユーザ)
  • 請求内容
    売買代金請求(訴額 約763万円)
  • 経緯
    ユーザはベンダに対し、教材販売システム一式を発注した。ベンダはシステム開発を進めたが、開発に必要なユーザとの打ち合わせを早期に十分に行わなかった。他方で、ユーザも自らの担当作業であるデータ登録を行わなかった。その結果、システムの完成が遅延した。ユーザは完成が納期に遅れ、新学期である4月にシステム稼働できなくなったこと等を理由に、契約解除を主張し、代金支払いを拒絶した。そこで、ベンダはユーザに対し、訴訟を提起してシステムの代金を請求した。

争点

ベンダのシステム開発が納期に遅れたことをもって、契約解除できるか。

  • ベンダの主張
    システム開発の遅延は、ユーザがデータ登録を行わず、開発に協力しなかったのが原因である。そのため、ユーザは、遅延を理由に契約解除できない。
  • ユーザの主張
    システム開発の遅延は、ベンダがユーザとの打ち合わせを怠ったからであり、ベンダの責任である。そのため、ユーザは契約を解除できる。

判決

ベンダの請求認容(約763万円全額につき)。
本件では、ベンダが早期に必要な打ち合わせを怠った点に非がある。しかし、ユーザも自らの事業のためにシステムを導入する以上、ベンダに協力すべき信義則上の義務を負う。本件では、ユーザがデータ登録作業を実施しなかったことがシステム稼動遅延の一因である。そうすると、稼働遅延を原因として契約解除することは認められない。

反省点

  • システム開発という共通の目標に向かって、ユーザ、ベンダの両者が協力し合うべきである
    本件では、ベンダ側が必要な打合せを実施することを怠り、さらにユーザ側が自ら行うべきデータ移行作業をしなかった結果、システム開発が遅延した。システム開発を行うためには、ベンダが専門家として最大限努力することはもちろんのこと、実際にシステムを利用するユーザ側の協力も必要である。
    本件においても、ユーザ・ベンダ双方が自らに分担された作業を確実に実施するとともに、相手方担当分についても誠意をもって協力し、システム開発に向けて互いに努力をすべきであった。
  • ユーザ・ベンダ間の連携を取るため、連絡協議会を設置すべきである
    本件では、ベンダとユーザの双方が、本来行うべきことを怠った結果、システム開発が遅延している。ベンダとユーザが十分なコミュニケーションをとり、緊密な連携を行っていれば、システム開発の遅延は防げたはずである。そのためには、両当事者で連絡協議会を設置・開催し、責任者同席のもと定期的に問題解決と進捗管理、方針決定を行うべきであった。

モデル契約書活用のポイント

  • モデル契約書<第一版>第8条では、ベンダ、ユーザ相互の協力義務が明記されている。とりわけ請負契約においては、注文者であるユーザ側は、専門家であるベンダに「すべてお任せ」という姿勢になることがあるが、ユーザ側にも協力義務があることを、契約書で明確に確認しておくことは、そのような姿勢を戒めることにもつながる。
    さらに、モデル契約書では、ベンダとユーザが、あらかじめ合意した役割分担にしたがって作業をしなかった場合、作業を怠った側が、それにより生じた結果について責任を負うことを明記している。このような規定を置くことで、役割分担に応じて作業を行う義務は、単なる努力義務ではない契約上の義務であることが明らかとなり、本件のようにユーザ側が分担作業の実施を怠る場合には、その結果システム開発が納期に遅れても、その責任をベンダに追及できないことを、契約時点であらかじめ認識する契機となる。
  • また、モデル契約書<第一版>第12条、モデル契約書<追補版>第4条には、連絡協議会設置の条項がある。連絡協議会は、ユーザ・ベンダが、業務終了までの間、その進捗状況、リスクの管理及び報告、ユーザ・ベンダ双方による共同作業及び各自の分担作業の実施状況、システム仕様書に盛り込むべき内容の確認、問題点の協議及び解決その他本件業務が円滑に遂行できるよう必要な事項を協議することを目的とする。モデル契約書を利用し、連絡協議会を設置すれば、ベンダ・ユーザ間の連携がとれ、プロジェクトの進捗管理を適正に行うことができる。