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13. 業務範囲・完成基準が曖昧なためにトラブルになった事例

Last-modified: 2012-09-24 (月) 16:37:18 (2464d)
Top / 13. 業務範囲・完成基準が曖昧なためにトラブルになった事例

D.完成基準・検査 トラブル原因分類 FrontPage


 

事例概要

  • 原告:ソフトウェア開発会社(ベンダ)
  • 被告:旅行会社(ユーザ)
  • 請求内容
    請負代金支払請求(本訴)(約1140万円) 請負代金返還請求(反訴)(約3000万円)
  • 経緯
    ユーザは航空券等の申込みや決済等の機能を有するソフトウェア開発をベンダに依頼した。しかし、ベンダが開発した本件ソフトウェアには遠隔操作機能が含まれておらず、複数の代金決済が集中すると固まってしまうなどの不具合が発見された。ベンダは請負代金の残額を請求し、ユーザは債務不履行解除に基づき既払い代金の返還を請求した事例。

争点

本件ソフトウェアは完成したか。

  • ベンダの主張
    ①仕様書に遠隔操作機能の記載はなく、契約内容とはなっていない。
    ②ユーザから検収不合格の通知を受けておらず、検収は終了している。
  • ユーザの主張
    ①遠隔操作機能は不可欠の機能で、当初より付加することは合意していた。また、ベンダ作成の構成図に遠隔操作機能を示す記載がある。
    ②ベンダの協力がなく、検査が十分に行えなかった。
    ③問題なく決済が成功する確率は極めて低く、業務での使用に耐えられるものではない。

判決

(本件争点につき)ベンダの請求棄却、ユーザの請求認容(約2570万円)。
ユーザの主張を認め、遠隔操作機能は契約内容に含まれ、また、決済成功率も考慮して、本件ソフトウェアは完成していないと認定された。  

反省点

  • システムの要求仕様を要件定義段階で明確にすべきである
    本件では、遠隔操作機能(ユーザが直接サーバのデータを変更する機能)が契約内容に含まれているかが大きな争点であった。本件開発契約書別紙の仕様書には遠隔操作機能に関する記載はなかったものの、旅行商品販売業務を行う上では不可欠の機能である点や当初の合意内容、さらにはベンダ作成の書類に同機能を示す記載があったことなどから、遠隔操作機能は契約内容に含まれると判断された。
    一般的には、契約書に添付された提案書や仕様書等に記載がない機能についてその他の諸事情から契約内容と判断される可能性は低く、要件定義作成支援業務に係る個別契約で明確に規定すべきであった。
  • 検収及び代金の支払に関する曖昧な対応は避けるべきである
    本件では、ユーザは成果物納入の日から10日以内に検査結果の通知を行わず、また、一部のソフトウェアの代金も支払っていた。裁判では検査結果を通知しなかったのはベンダの協力が得られず検査が行えなかったためであり、代金を支払ったのも今後の交渉を踏まえてとりあえず代金を支払っていたと認定されたが、このような曖昧な態度をとると検収が完了した(ユーザは債務の本旨に従った給付を受領していた)と認定されるおそれもあることから、かかるリスクを認識した上、書面(覚書)等で明確化するなどの対応をすべきであった。

モデル契約書活用のポイント

  • モデル契約書<第一版>では、コンピュータシステム構築の作業段階ごとに契約を締結することを勧めている。本件のような要求仕様の範囲が問題となる事例では、要件定義作成支援業務に関する内容を契約書で明確に決めておくことが望ましい。
  • 具体的には、モデル契約書<第一版>第14条以下の要件定義作成支援業務に関する条項で両当事者が行うべき内容及び責任を明確化するとともに、同第15条に基づき要件定義作成支援業務に係る個別契約を別途締結し、本件のような不可欠な機能(遠隔操作機能)が付加されないという事態を起こさないように当事者間で要求仕様の内容を明確化すべきである。