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12. システム開発の仕事の完成と、不具合による解除の可否が争われた事例

Last-modified: 2012-09-24 (月) 16:36:59 (2485d)
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D.完成基準・検査 H.変更管理 I.債務不履行・瑕疵担保責任 トラブル原因分類 FrontPage


 

事例概要

  • 原告:システム開発会社(ベンダ)
  • 被告:石材の加工・販売会社(ユーザ)
  • 請求内容
    本訴請求: 請負代金請求(訴額 約1億1522万円)
    反訴請求: 損害賠償請求(訴額 約1億3266万円)
  • 経緯
    ユーザは、ベンダに自社の販売管理システムの開発を一括請負させた。ベンダはシステム全体を納品し、検収を完了した。ユーザは本件システムを稼働させたが、処理速度が遅いなど、不具合が発覚した。しかしベンダは不具合を認めず、補修をしないため、ユーザは請負代金支払いを拒絶した。そこで、ベンダは訴訟を提起し、請負代金を求めた。これに対し、ユーザは反訴を提起して、本件システムの不具合を原因として請負契約を解除し、前払金の返還と損害賠償の支払いを求めた。

争点

①システムは完成したといえるか。②不具合は解除原因となるか。

  • ベンダの主張
    ①システムは検収が完了し稼働しているので、完成している。
    ②不具合は、ユーザの指示・要求が原因なので、ベンダは責任を負わない。
  • ユーザの主張
    ①システムには未改修部分が残っており、完成していない。
    ②不具合は重大なものであり、契約解除の原因となる。

判決

ベンダの請求棄却、ユーザの請求一部認容
前払金約1143万円の返還及び損害賠償金約581万円の支払い。

  1. システムが完成したかどうかは、契約で予定していた最後の工程まで終わっているかどうかを基準に判断すべきである。本件では完成したといえる。
  2. システムの検収後に、注文者から不具合発生の指摘を受けた場合、請負人がすぐに補修すれば、その不具合は解除原因にはならない。しかし、今回は補修がされておらず、かつ、重大な不具合なので解除原因となる。

反省点

  • システムの要件は、可能な限り明確にしておくべきである
    本件システムには、処理速度が遅いという問題があったが、裁判所は、ベンダが提案書において、販売管理及び経営管理の迅速化並びに合理化を図ることを本件システムの目的として提示していること、販売管理システムにおいては、迅速化及び合理化が必須の要素であり、処理速度が遅いことは重大な不具合であるとして解除原因となると判断した。
    契約当初から、システムに求められる処理速度のレベルが明らかであるなら、それを要件定義書等において定めておくことが考えられる。もし契約前の段階でそのような定義が難しいのであれば、未確定事項として置いておき、設計やハードウェア選定等、具体的なパフォーマンスが決定されるタイミングで、あらためて機能とコストを秤にかけて検討するべきであった。
    ベンダはシステムの専門家として、そのシステムの用途からみて必要なだけの処理速度を確保できるように、ユーザに提案、協議しなければならない。
  • システム不具合が判明したら、ベンダはすぐにユーザに説明すべきである
    本件システムの、在庫検索のレスポンスが非常に遅いという問題点について、ベンダは、ユーザが要求した検索項目数が多すぎることが原因であり、ユーザに責任があると主張した。
    しかし、システムの専門家であるベンダは、問題点が判明した時点で直ちにユーザに説明し、たとえば検索項目数を減らす、ハードウェアを変更するなど、解決に向けた複数の選択肢を提案し、メリット・デメリットを示しながら、協議する必要があった。そして、そのような協議の末に仕様とコストの変更が生じるのであれば、変更契約や変更管理手続に基づいて処理すべきであった。
    なお、本件で裁判所は、システムの不具合をもって契約解除できるかという点につき、システム開発において、プログラムに不具合が生じることは避けられず、納品及び検収等の過程における補修が当然予定されているのだから、システム開発の途中で発生した不具合は解除原因となる瑕疵(欠陥)には当たらず、システムの納品及び検収後についても、注文者から不具合が発生したとの指摘を受けた後、請負人が遅滞なく補修を終えるか、注文者と協議した上で相当な代替措置を講じたと認められるときは、システムの瑕疵には当たらないとの基準を示している。

モデル契約書活用のポイント

  • モデル契約書<第一版>では、処理速度等の非機能要件については、「早期に優先度と重要度を明確にすることが望ましい」(47頁)ことから、要件定義書に記述することとしている。
  • また、契約を多段階化することにより、システム仕様書にしたがって確定した機能であっても、その実現を優先すれば他の課題が生ずると見込まれる場合、次の工程に係る個別契約の締結に際して、あらためて内容、費用、スケジュール等を協議することができるため、使えないシステムが出来てしまうリスクや、ベンダがコスト倒れになってしまうリスクが低減される実益がある。