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11. 要件定義及び変更管理規定が不十分でトラブルになった事例

Last-modified: 2012-09-24 (月) 16:36:11 (2464d)
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事例概要

  • ベンダ:システム開発会社
  • ユーザ:地方自治体
  • 請求内容
    ベンダ:請負代金請求(5億5000万円)(内訳:保守運用1億3000万円、改修4億2000万円) ユーザ:遅延損害金請求(約549万円)

経緯

  • ベンダは、港を利用する人の申請から料金(船舶停泊や施設利用などの使用料)の精算等を行うシステムの保守コストを抑制する提案をユーザに対して行い、システム改修及び保守契約案件を受注した。平成16年度よりFAX申請、WEB申請に係るシステムの改修を完成させたものの、料金サブシステムを含む業務システムの改修において、従前のシステムに関する資料が乏しく分析に膨大な時間が掛かり、また度重なる変更管理などで当初の予算を大幅に超える費用が生じ、さらに納期から183日遅れての納品となった。

争点

追加費用の支払義務について

  • ベンダの主張
    過去開発した業者から仕様等が開示されずアプリケーション分析に時間が掛かり、運用中のソフトについてもサポート期間等が切れて調査・動作確認に膨大な時間がかかるなど、ユーザとして本来提供すべき改修環境が極めて不十分であったことが納期の遅れた要因であり、遅延損害金は支払わない。また、変更管理によって改修費用が当初の予算(約2億5000万円)を大幅に超えたため(約5億5000万円)、追加費用を支払うべきである。
  • ユーザの主張
    自治体の予算は決まっており、この範囲で改修作業を行う約束であり、追加費用等を支払う義務はない。むしろ、納期が約半年と大幅に遅れたことから、これによって生じた遅延損害金の支払うべきである。

結果

ベンダはユーザに対して追加費用の支払いを受けることはできず、請負代金から遅延損害金として549万円の相殺を受け、最終的にベンダにとって3億500万円の大幅赤字案件となった。 

反省点

  • 契約書によって仕様及び変更管理手続を明確に規定すべきである
    本件では大まかな合意に基づいて案件を進めた結果、仕様が不明確であったため無理のある細かな変更管理を繰り返し、結果として改修完成が遅れ、改修費用が増大した。当初より当事者間で仕様を明確に規定するとともに、機能追加を含む変更が生じた場合の手続・費用負担等についても、契約書で予め規定しておくことが望ましかった。
  • ユーザはベンダにシステム改修が円滑に進むような環境を提供すべきである
    対象となるシステムについて、過去に開発した業者の協力が得られず、ソフトについてはサポートや資料公開が打ち切られたものばかりで、仕様やソースが開示されず、その分析に膨大な時間が掛かってしまった。かかる環境であることは受注した後に判明したものである。
    正確な見積を提示するためにも、また上記のようなトラブルを避けるためにも、取引関係に入る前提条件として当該システムの内容について確認すべきであった。また、ユーザは既に動いているシステムであっても明確な仕様書がない限りは、発注に慎重になるべきである。
  • 地方自治体の特殊事情に十分留意する必要がある 地方自治体は予算措置において議会の承認を必要とするため、追加予算を申請する事を嫌う傾向がある。契約等で縛りのない限り地方自治体が自発的に動く事はほとんどない。また、自治体特有の人事として2年~3年で担当者が異動していく為、それを超える期間の開発においては内容を契約等で明確にしておかないと口約束レベルの合意は無かった事になる可能性が高い。本件では受託金額に比して赤字部分がかなり大きいためベンダは損害賠償訴訟も検討したが、受託業者にとって有利に働くはずの下請法も自治体は「事業者」に該当せず適用されないため、断念せざるを得なかった。   

モデル契約書活用のポイント

  • 本件のような地方自治体案件であっても、モデル契約書<第一版>を使って多段階契約に基づき明確な取り決めをすることで紛争を未然に防げた可能性がある。具体的にはソフトウェア開発委託基本契約書を締結し、同契約書第14条以下の規定に基づき要件定義に係る個別契約を締結するとともに、検討会(第15条)を開催して仕様を明確にする機会をできるだけ設けることができる。
  • また、同契約書第8条ではシステム開発はユーザ・ベンダの共同作業であることを明記しており、ユーザは既にあるシステムの仕様について明確にする義務(仕様提供義務)を負うことを明確化できる。さらに、作業着手後の変更についても、同契約書第33条以下の規定に基づき、変更内容を書面で明確化(同第33条ないし第35条)し、予め当事者で合意した変更管理手続(同第37条)に従って実施することで、契約内容に変更が生じた場合の各当事者の役割及び責任分担を明確化することができると考えられる。