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10. 要件定義が不十分でトラブルになった事例

Last-modified: 2012-09-24 (月) 16:35:54 (2550d)
Top / 10. 要件定義が不十分でトラブルになった事例

C.業務範囲 H.変更管理 トラブル原因分類 FrontPage


 

事例概要

  • 原告:システム開発会社(ベンダ)
  • 被告:書籍管理・配送等を業とする会社(ユーザ)
  • 請求内容
    請負代金請求(約5570万円)
  • 経緯
    ユーザは書籍在庫管理システムを現行のオフコンから新機能を追加したパソコンで導入することを検討し、訴外Aへ発注したものの開発が円滑に進まず、改めて本件ベンダへ発注した。ベンダは、検収の段階でユーザから個別出版社対応プログラムの機能不足への対応を要請され、ユーザの仕様提示のないプログラムを除いて追加開発をし、システムを完成させた。開発費用が当初の見積から大幅に増えたため、追加の請負代金請求をめぐり紛争となった。

争点

本件開発業務範囲に個別出版社対応プログラムも含まれるか。

  • ベンダの主張
    当初開発範囲に加え、追加要請分の個別出版社対応プログラムもユーザからの仕様未提示分を除き作成したので本件システムは完成していた。
  • ユーザの主張
    「現行オフコンの業務+新機能」の開発を依頼しており、現行オフコンには個別出版社対応プログラムが含まれていたことから、当該プログラムも開発業務に含まれる。

判決

  • 原告の請求認容(約4950万円)。
    ベンダはユーザがAへ発注した在庫管理システムには個別出版社対応プログラムと同様のシステム構築を受注したに過ぎず、本件開発業務範囲には当該プログラムは含まれていない。ベンダはユーザの仕様未提示のために設計できなかったものを除いてプログラムの製作を終了している。なお、未完成部分が全体の分量に比べて少量であることに鑑みても、この点を請負業務の未完成の理由として主張することは信義則上許されないと判断された。

反省点

  • 仕様を契約書によって明確に規定すべきである
    本件紛争の原因は、正式な契約書を締結せず、追加開発作業分と裁判で認定された部分を含めて開発仕様を明確に決定しなかった点にある 。ユーザの現行のオフコンにはユーザ自身が開発した個別出版社対応プログラムが含まれていたが、ユーザがAへ発注した仕様書には開発費用を抑え、運用もしやすくするなどの理由から個別出版社対応プログラムが含まれておらず、他方で原告が提示した見積書の前提条件には新システムについて現行オフコン業務に新機能を付加したものを内容とすることが記載されていたことから、かかる齟齬が当事者の認識の不一致を招き、紛争へと発展した。 裁判では、ベンダは、Aが開発に失敗した在庫管理システムについて同様のシステム開発したに過ぎず、個別出版社対応プログラムが含まれていなかったと認定されたが、当初よりベンダとユーザとの間で契約書を締結し、仕様をより明確にしていれば防げた事例である。
  • 機能追加を含む変更管理手続に関する取り決めの必要性
    上記追加開発作業分(個別出版社対応プログラムの開発に係る部分)の費用について、ベンダは当初見積書の「見積書には作業着手後の機能追加等により工数に大幅な変動が生じた場合は別途相談する」の記載を根拠に請求したが、裁判では報酬請求権の根拠としては認められなかった。しかし、別途当事者間で合意があったとして当該報酬請求権を認めた。機能追加を含む変更が生じた場合の手続・費用負担等についても、契約書により予め明記しておくことが望ましい。

モデル契約書活用のポイント

  • モデル契約書<第一版>では、要件定義作成支援業務、外部設計書作成(支援)業務により仕様を確定することとしており、その業務のプロセスではベンダ・ユーザ協働による検討会の開催を想定している(同第16条及び第21条)。モデル契約書を活用し、仕様を明確にすべくベンダとユーザが協働していれば、個別出版社対応プログラムに関する認識の不一致は防げたはずである。
  • また、モデル契約書<第一版>では、作業着手後の機能追加等についても、第33条以下の規定に基づき、変更内容を書面で明確化(同第33条ないし第35条)し、予め当事者で合意した変更管理手続(同第37条)に従って変更契約の締結をすることで、変更後の契約内容及び各当事者の役割及び責任分担を明確化することができる規定を用意している。少なくとも、本件ではシステムの最終検収時点でなく、追加開発作業の着手時点において、開発作業の範囲についてベンダ・ユーザの認識を再確認することができるため、このような紛争を防げるものと考えられる。