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1. 契約成立以前に作業を開始したためトラブルになった事例

Last-modified: 2012-09-24 (月) 16:21:55 (2464d)
Top / 1. 契約成立以前に作業を開始したためトラブルになった事例

A.契約前の作業 トラブル原因分類 FrontPage


(参考:東京地方裁判所 平成12年9月21日判決(平成11年(ワ)第6181号))
(外部関連文書:ソフトウェア開発委託契約紛争事例の研究(2)内布 光

事例概要

  • 原告:ソフトウェア・システムの開発・販売等を業とする会社
  • 被告:外国語の翻訳及び通訳等を業とする会社
  • 請求内容
    ベンダのユーザに対する違約金(損害賠償)請求(約2625万円)
    (内訳:提案書作成及びシステム開発に係る人月)
  • 経緯
    ユーザは独立行政法人(発注者)の公募事業「インターンシップ支援システム」(以下「本件システム」)の開発・運用事業への応募を検討し、ベンダとの間で独立行政法人に対する本件システムの提案及び開発について共同事業に関する協議を開始した。ユーザ単独による応募を経て独立行政法人より本件システムの開発を受注したものの、ベンダ・ユーザ間で請負代金額等の折り合いがつかず共同事業を解消した。共同事業の解消までにベンダが要した費用の清算をめぐり紛争となった事例。

争点

契約締結前のシステム開発費用につきユーザに支払義務が認められるか。

  • ベンダの主張
    ユーザとの間で本件システムの申請書作成及び開発作業の合意は成立しており、合意解消の際に上記作業に掛かった費用の清算を約束していた。
  • ユーザの主張
    ベンダには独立行政法人への申請書作成の共同作業を依頼したに過ぎず、システム開発に着手することまでは合意していない。また、ベンダの開発費用を清算するという約束もしていない。

判決

  • ベンダの請求を一部認容(約1365万円)。
  • 判決では、ユーザはベンダがシステム開発作業に着手したことを認識した上で、口頭で開発費用も含めた清算の合意をしたと認められた。なお、当該システム自体は今後ユーザの負担のもと大幅な修正が必要であるため、開発費用等の一部の支払いが認定された。

反省点

  • 正式な契約書の締結を待ってから開発作業に着手すべきである。
    本件紛争の原因は、正式な契約が成立せず、費用分担について明確な取り決めを行う前に、ベンダが本件システム開発作業を先行させてしまった点にある。当事者は、独立行政法人へ申請書を提出後も当事者間の正式契約締結に向けて交渉を行っていたが、申請書で提出から3ヶ月後には実証実験を開始する旨を規定していたため、これに間に合わせる形で開発作業に着手してしまった。
    本件ではベンダ・ユーザ間の清算に関する合意が認められてベンダの開発費用が一定額支払われたが、ベンダは開発作業に着手する前に少なくとも書面などで開発費用についての合意(ユーザの意思表示の確保)をしておくべきであった。

モデル契約書活用のポイント

  • 本件では、システム開発費等について調整がつかず契約書締結には至らなかったが、ベンダが開発作業に着手するまでにモデル契約書を用いてかかる開発費用の支払いについて明確に決定すべきであった。
  • 具体的にはモデル契約書<第一版>ソフトウェア開発基本モデル契約書を締結するとともに、第一版第4条の規定に基づき、個別業務に着手する前にベンダの提案書または独立行政法人へ提出した申請書を基礎として、具体的作業内容(範囲、仕様)、作業スケジュール、委託料または支払方法など必要となる取引条件を個別契約で定めることが望ましい。