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スルガ銀行対日本IBM訴訟

Last-modified: 2012-11-02 (金) 14:19:03 (2539d)
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スルガ銀行対日本IBM訴訟第一審判決(東京地裁平成24年3月29日判決)

 スルガ銀行と日本IBMの訴訟についての第1審判決が平成24年3月29日に言い渡された。結果は、逸失利益の請求以外についてスルガ銀行の完全勝訴で、日本IBMはスルガ銀行に対して74億円あまりの支払義務があることが認められた。
 本判決は損害賠償の額の大きさで大きな注目を受けたが、業者の立場から見ると「プロジェクトマネジメント義務」という意味のはっきりしないものによって、このような大きな額の損害賠償がみとめられたことが注目される。
 およそ他人に対して損害賠償義務を負うケースは二つある。一つは契約違反、もう一つは不法行為である。契約違反は契約で決められてない事をする場合でどんな場合に契約違反になるかはおおよそわかる(但し、要件定義についての契約のような準委任契約の場合どんな場合に契約違反になるか非常に曖昧であるが、紙面の関係でこの点は触れない。)。不法行為は契約関係のないものの間でも認められ、違法に他人の権利等を侵害した場合に認められる。どんな場合に違法の侵害があるかは、基準が明確ではない。ラフな言い方をすれば、「法的に見てやるべきことをやらなかった」ときに違法になる。
 今回の日本IBM対スルガ銀行の事件では日本IBMとスルガ銀行の間に契約関係は認められなかった(それで何十億の支払いがなされ数年も仕事をしていること自体驚くべきことだが、ここでは深く触れない。)。日本IBMがスルガ銀行に74億円あまりのお金を支払わなければならないのは、日本IBMが以下の理由等でスルガ銀行の権利等を違法に侵害したからであるとされた。

  1. 日本IBMは利用を予定していたパッケージソフトウェア及びその開発方法について十分な検証又は検討をしていなかった。
  2. 日本IBMは利用を予定していたパッケージソフトウェアについての適切な開発体制を整えていなかった。
  3. 日本IBMは利用を予定していたパッケージソフトウェアについての十分な説明を行っていなかった。
  4. サービスインの時期が遅れた。

 地方裁判所、高等裁判所の判決は一般的なルールをつくるためのものではない。スルガ銀行と日本IBM事件の地裁判決はスルガ銀行と日本IBMのトラブルを解決するためのだけに出される。したがって、今回の判決について「基準があいまい」という批判はあてはまらないかもしれない。しかしながら判決は裁判所という国の機関が出しているので、「おなじような事件がおきたら同じような判決がでるのではないか」と考えることはそれほどおかしなことではない。

 今回の判決から学ぶべきことは、以下の点であろう。

  1. たとえ契約違反でなくても、契約違反と同様の損害賠償義務を負う場合がある。
  2. パッケージソフトをもとに開発を進める場合、パッケージソフト、開発体制についての事前の検証及び顧客への説明が大切であり、これを怠ったら契約書でどんなに逃げ道を書いていても損害賠償義務を負う可能性がある。
  3. システムの開発現場における日々の業務において、自分がベンダとして何を行うべき法的義務があるのかを意識することが大切で、現場での判断をあやまると上記の損害賠償義務を負う可能性がある。
  4. 法務部門は契約ドラフトによるリスク回避だけでなく、現場で法律違反の判断がなされないよう、これをモニターし、チェックする機能を持つ必要がある。
以上。

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